美樹はそっとドアを開けて覗いてみるが、彩は部屋にはいなかった。
 あまりにも何もない部屋。
 パイプベッドがひとつと、その横にサイドテーブル。
 サイドテーブルの上には、煙草と灰皿が置いてある。


「彩、煙草吸うんだ・・・」


 吸っているところは、一回も見たことがないが。
 部屋の窓が開いていて、半開きのカーテンが風に揺れていた。


「ウソでしょ・・・」


 もしかして、2人を追いかけていったのだろうか?
 何でそこまでしなきゃならないのか。


「なんなのよ、もう」


 呆然とする美樹。
 あんな身体能力を持った彩を追いかけるなんて不可能だ。
 だがとりあえず、美樹は着替えて外に出てみる。
 彩が靴を履いていった形跡がなかったので、靴を持って探して歩いた。
 だがやはり、彩は見つかる訳もなく・・・一時間ほど探して、美樹は仕方なく家に戻ってきた。
 この家に誰もいなくなり、本当に久しぶりに一人ぼっちにになった気がする。
 ほんの少しだけ解放感を感じ、そして、物凄く寂しい気がした。