少し風も強くなってきて、そんな怪しい雲行きのせいか、ビーチパラソルは次々と畳まれている。


「ねぇ、悠くん」


 美樹は、かき氷機を運び終わった悠に声をかけた。


「諒くん、迷いなく出ていったけど・・・彩の居場所、分かるの?」
「岬の手前だよ。そこで一人で、海見てる」


 ・・・どうして黙って出ていった筈の彩の居場所が、そんなにはっきりと分かるんだろう。
 それを聞いたら、悠は至極シンプルに答えてくれた。


「気配で分かるよ」


 あぁそうですか、と、美樹は頷く。
 最近、あまり深く考えないようにしている。
 アヤカシなのにどうしてご飯を普通に食べるのか、とか。


「美樹ちゃんが何処にいるのかも、気配ですぐに分かる」
「でも、人間って、この街だけでも数えきれない程いるでしょ?」
「そうだね。だけど美樹ちゃんの気配は、美樹ちゃんしか持ってないからね」


 にこやかに言う悠に、そんなものかと納得する。


「ね、悠くん。彩はどうして、一人になりたいの?」


 どちらかというと一人は苦手な美樹の質問に、悠は少し困ったような表情を浮かべる。