悠の話では、この喫茶店『free‐time』がある場所は特殊なスポットで、アヤカシが活発に動く場所らしい。
 だから店の大屋である中川美恵子は、この3人を美樹と一緒に住ませることにしたのだそうだ。
 美樹が、ここがオバケ屋敷だからこんな安い家賃で貸してくれたのだと予想したのは、あながち外れてはいなかったようだ。
 しかも、悠と諒が本当に実体のないアヤカシだなんて、信じられなかった。


「・・・なんか、腹減ったね」


 いきなり、彩がそんなことを言い出す。
 だから嫌でも現実に引き戻されて。
 まるで何事もなかったかのように、彩は大きく伸びをしながら言った。


「悠、諒、車の中の荷物、家の中に入れておいて」
「そんなにたくさんあるのか?」
「うん。ほとんど美樹セレクトだから、趣味が合わなくても文句言わないこと」
「ちょっと彩、わたし、結構可愛いのを選んだはずだけど?」


 動物キャラクターのマグカップとか。
 美樹が持っている猫のマグカップと同じシリーズで、悠はキリン、諒はライオン、彩のはゴリラ。
 それに関しては、彩は納得していないらしい。