A-YA-KA-SHI☆バスター!!

「どうして謝るんだ? いい妻と娘に恵まれて、俺も幸せだったよ」


 その光景を見ていた美樹は、何故両親が『過去形』の会話をしているのか、不思議に思った。
 母親は、悲しそうに微笑む。


「ごめんなさい・・・私は、もう・・・」


 父親は、黙って助手席の妻を抱き寄せた。
 美樹ははっとして、走っている車の前方を見た。
 車は、両親が事故を起こしたあの崖に差し掛かっていた。
 はっきりと見える、車の前方に、ニヤリと笑いながら浮かんでいるのは。


(アヤカシ・・・!)



『みぃ…つけ、た』



 まるで弱っている獲物を狩るのを楽しんでいるような、アヤカシのそんな声が聞こえた。


(・・・逃げてーーー!!)


 美樹の叫びは聞こえない。
 次の瞬間、車はガードレールを突き破り、真っ逆さまに崖下の海へ落ちていった。


「・・・いやぁぁぁぁっ!!」


 顔を覆い、美樹は叫ぶ。