嘔吐感は止まらない。
 彩にはそれがこの空気のせいなのか、悲しみのせいなのか、怒りのせいなのか分からなかった。
 だが今は、そんなことはどうでもいい。
 彩は歯を食い縛り、立ち上がろうとする。


「あたしは灯台に用事があるんだよ。そこをどきな」


 なかなか言うことを聞いてくれない身体。
 頼む動いて、と彩は心の中で願う。


「・・・鍵の覚醒の邪魔をするというなら、容赦はしない」


 アヤカシは冷ややかに言った。


「何が鍵だ!! 美樹はそんなんじゃない!!」
「あれは、我らの戦いの重要な鍵だ。あの力を覚醒させ、我が物にすれば・・・」
「させるかよ」


 彩は立ち上がる。
 ようやく全貌が見えた気がした。
 和也は、美樹の力を覚醒させることが出来る。
 それをこのアヤカシは狙っているのだ。
 最早どっちがどっちを利用しているかなんて関係ない。