「痛っ・・・!!」


 思わず胸を押さえながらその場で膝をつく。
 その瞬間、一際大きな閃光が、埠頭を照らした。
 肩で息をしながら、彩は地面についたままの拳を握り締めた。


「・・・嘘だろ・・・!」


 ずっと一緒だった、二人の気配。
 それが、たった今。


「消えたのかよ!! 悠・・・諒!!」


 気持ち悪い。
 込み上げてくる嘔吐感に、彩は涙を堪えて耐える。
 灯台は目の前なのに、どうしても身体が動かない。
 出来ることなら、この場で倒れてしまいたかった。


「残念だったな、人間よ」


 顔を上げる。
 そこには、埠頭にいたアヤカシが宙に浮かんだままこっちを見下ろしていた。


「何故悲しむ? 相容れない者が消えた、ただそれだけのこと」


 アヤカシにとっては、そんなことは日常茶飯事。
 誰が消えたからといって、悲しむ者は一人もいない。