息が切れる。
 人混みを何とか抜けた彩は、やっと防波堤の入り口にたどり着いた。
 この先には、美樹がいる。
 彩は、ジーンズのポケットから美樹の携帯を取り出した。
 何故か、悠と諒、そして彩の3人の写真が待ち受けになっていて。
 それを見て、くすっと笑う。
 携帯の時計は、夜11時を表示していた。


「あと、一時間・・・」


 時間は刻々と過ぎていく。
 彩は携帯をしまうと、少し埠頭を振り返った。
 時折、激しい閃光が走っている。
 今までとはケタ違いの、激しい戦闘だ。
 漠然と感じる不安は消えないが。


「時間がない・・・美樹・・・!」


 彩はまた、走り出す。
 灯台に近付くに連れて、だんだん空気が重くなっていくのを感じた。
 あのマンションの時と同じだ。
 身体中にまとわりつくような、気持ち悪い空気。
 だが立ち止まる訳には行かない。
 一歩進もうとしたその時、彩の胸を、何かが突き刺すような痛みが走った。