「会いたかった、彩さん」
「あたしも、お前とちゃんと話をしたかったんだ」


 だけど聞く耳持ってないね、と、彩は小さく呟いた。
 屋上の足下のコンクリートが、徐々にひび割れていく。
 小さな欠片になったコンクリートは、ゆっくりと浮かんで。
 彩がその場を飛び退くと同時に、それは物凄いスピードで、たった今まで彩がいた場所めがけて突き刺さるように飛んできた。


「会いたかった相手に、なんちゅう歓迎のしかただよ」


 思わずそうボヤくが、小石状になったコンクリートは次々に彩めがけて飛んでくる。
 これでは避けるのに精一杯で、友香に近付くことも出来ない。
 四方八方から飛んできて、そのうちのいくつかは彩の腕や足を掠めた。
 和也に何らかの力を加えられてるとしても、友香にこんな力があるとは思えない。
 気配を感じるのが、遅かった。