友香は前と変わらずに、彩を誘い出すように視界から消えたり、そうかと思えばずっと向こうに姿を現したりしていた。


「そんなに警戒しなくても、ちゃんと着いていくから心配すんな」


 港とは反対の方角、街の方に向かっている。
 だが、何処に向かおうと、こっちは距離なんて関係ない。
 待っているのが罠だろうが、とにかく友香を助ける。
 それだけだった。
 夜の街には、何故か人影はなかった。
 彩は友香を追って、全力で街を駆け抜ける。
 一瞬見失ったかと思ったが、友香はあるビルの屋上に、姿を現していた。


「もう、追いかけっこは終わりか?」


 ビルの屋上に追い付いた彩は、友香にそう声をかける。
 もう逃げる様子はなかった。
 友香はゆっくりと振り返って、にっこりと笑った。