「行ってくる」


 彩が出ていったテラス戸の前に立ち、諒が言った。
 リビングのソファに座ったまま、悠は黙って頷いた。
 美樹を頼む、と言い残して家を出ていく諒を見送って、店の周りを結界で包み込む。



☆  ☆  ☆



 明け方まで戦って、また夜になると大量のアヤカシを迎え撃つ。
 そんなことが3日も続くと、さすがに疲れも出てきた。
 美樹は、食事の時以外は部屋に閉じこもりきりだった。
 一言も、口を開かない。
 和也が来たらしいあの日から、この家の空気が変わったような気がした。
 彩はイライラと、テーブルを指でこつこつ叩いている。
 美樹もそうだが、今にも爆発しそうな彩のイライラを抑えるのも一苦労だった。


「いい加減落ち着け、彩」


 見かねた悠が言う。