だがどうやら、今日も何も動きはない。
 もうすぐ朝になろうとしていた。
 もう帰ろうかと思ったその時、玄関が開いて友香が出てきた。
 学校に行くには早すぎる時間なのだが、制服姿だ。


「朝の散歩か?」


 海とは逆の方角、街の方に向かって歩いていく友香。
 ちらりと、こっちを見た。
 彩は思わず舌を出す。


「バレてた」


 こうなったら、あからさまに追いかけてやる、と、彩は走り出す。


「今日こそは捕まえてやるからな!」


 気合いを入れる。
 だがやはり、友香には追い付けない。
 視界にその姿を確認するたびに、友香は『消える』。
 そしてしばらくすると、また現れる。


「普通の人間じゃないんなら、最初から言えよな」


 彩は走る速度を上げた。
 もう殆ど、全力疾走と言っていい。
 だが、街に入った途端に、また見失う。