「わたしは普通の家庭で普通に育ってきた人間です。わたしには、そんな大それた力なんてない」


 彩も悠も諒も、今も必死で戦っている。
 美樹のため、 みんなのために。
 それはわかる。
 でもどうしてそこまでして戦わなければならないのか。
 命まで、危険にさらして。
 美樹には理解できない。
 だけど。


「彩も悠くんも諒くんも、今ではみんなかわたしのけがえのない友達なんです。わたし、彼らが来てからやっと・・・一人じゃなくなった」


 言いながら、美樹は玄関に向かうドアに手をかけた。


「中川さん。わたしはアヤカシの世界の事なんて、本当に何も理解してないんです。だから、あなたの期待には応える事なんて出来ない・・・だけど」


 美樹は、振り返って笑う。


「あなたの為じゃなく、友達の為に何か出来る事があるかも知れない。だから、行きます」


 婦人は、そんな美樹を、穏やかな表情で見つめ返した。