「隠して?」
「私達アヤカシから見えないように、ずっとあなたを結界で守ってたのよ」


 そんなことが出来るのだろうか。
 もし出来たとしても、相当なパワーを使うはず。
 美樹はふと、事故が起こる何日か前のことを思い出した。
 母親が昔より痩せたと思ったのは、自分が大きくなったからだと思っていた。
 だが、気が付いたら母親は、かなり華奢になっていて。
 何かの病気かと思い、頼むから医者に行ってくれとお願いした時。


『いいのよ。これは病気じゃないから、お医者様でも治せないわ。私はね、あなたが無事でいてくれたら、それでいいの』


 でも、と母親は続けて。


『これからもずっと、美樹を守っていきたかったけど・・・誰かに交代、お願いしなきゃかしら』


 そんなことを、小さく呟いた。


『交代って?』
『ふふ。早くいいお婿さんが美樹を守ってくれればいいな』


 冗談ぽく笑って。
 その時は当然、深い意味なんて考えてはいなかった。