「そしてね、その力は、何か1つ秀でているんじゃなくて・・・全てにおいて、強力だった」


 悠は癒しと防御。
 諒は攻撃。
 そんな構図が、頭の中に浮かぶ。


「そんな強いお母様も、人間と恋をして・・・そして、あなたが生まれた。だから、あなたにその能力が伝わっていてもおかしくないわ。彩も能力は持っているけれど、彼女の両親はれっきとした人間だった。きっとご先祖様に、私達と同じアヤカシがいたのかも知れない」
「でも・・・!」


 信じられない。
 木々の葉っぱが擦れた音が、静かなはずのリビングに響く。
 それはまるで不協和音のようで・・・。
 それに加えて、婦人のこんな話なんて、聞きたくなかった。
 だが婦人は、語るのをやめようとはしない。


「そんな強い力を持ったあなたのお母様は、あなたが生まれて、その存在がアヤカシに知られるという事を一番恐れた。だから、ずっとあなたを隠して育ててきた」