買った石はただ花崗岩で、勝手な事をした手前、佐々木さんに言い出せずに匠のいる学園に運んだのだ。

 運んだと言えば聞こえはいいが、匠ならなんとかするかもしれないという意識があって「捨てた」のである。

「解りました」

 と匠はゆっくり立ち上がり、未だ視線を泳がせている鈴木君を見下ろす。

「それを口外しても面倒になるだけですので、不問にします。次からは何かあれば直接、私におっしゃってください」

「あ、はい」

 淡々と応えられ、鈴木君は伝票を手にして入り口に向かう匠の背中をじっと見つめた。