彼はほんの一ヶ月ほど前に、佐々木さんの店にバイトで雇われたのだ。石材を扱うため、力仕事が多い。

 店主の佐々木はその点を心配していたが、思っていたよりも力があるのでそのまま採用となった。

 大学生の鈴木君は微笑む匠に一切、視線を合わせようとはせず、目を泳がせている。

 多少のいぶかしさを感じたが、匠と目を合わせて正常でいられるのは健くらいのものかもしれない。

 ただでさえ美形である匠に見つめられて、動揺しない者はほぼいない。

 匠たちは佐々木さんたちと別れ、再び商店街に歩みを戻した。

「確か彼は5時30分に終わるんだったかな?」

「え? 鈴木君? あ~、うん。確かそれくらいにバイト終わるね」

 つぶやいた匠に健が返し、それを確認するように匠は微笑んだ。