『カオルさん、僕もちょうど提出しようと思っていたところです。ついでですから一緒に渡しますよ』

彼女を遮り名乗りをあげたのは男だった。癖のない黒い髪に黒ぶち眼鏡。初めて見たときに、委員長になりそうな奴だなと思っていたが、思った通りの奴だった。

クラスをまとめるクラス長に真っ先に立候補したのは彼だ。
『僕が立候補します。副長には渡辺さんを推薦します』
クラスの皆も彼の風貌を見て納得したのか誰も反対しなかった。いきなり名指しされた渡辺カオルも、クラスの皆からの拍手喝采を浴びて副長となった。

奴は―――名前がどんなだったか覚えていないから、委員長と呼ぶことにしよう。委員長は眼鏡越しから見てもかなりの美形で女子からも人気が高かった。さらに委員長は明らかに渡辺カオルに好意を向け、俺を避けるようにしていた。

せっかく彼女と会話をするチャンスだったのに…。敵いそうのない恋敵。俺も委員長に対しあまりいい感情を抱いていなかった。

「青山さん。食べないんですか?」

小さな坊主頭の男が俺の顔を上目遣いで覗く。コイツは一年の頃から同じクラスで、いつも俺の後ろを金魚のフンのように着いてくる。