違う力によって引き寄せられ、男の人の手が離れた。

_______なんで。


「…行くよ」


それは、さっきまで綺麗な人にナンパをされていた、遥だった。

男の人は、舌打ちをしてどこか違う女の人のところへ向かっていった。


遥は、何も言わず私を引っ張る。
手が繋がれていて、心臓は爆発寸前。でも、遥は怒っているようだった。

…迷惑かけたから?
最後の最後まで、迷惑かけて。
嫌われて当然なのかな…。


そのまま改札を抜け、電車に乗る。
席は空いていて、普通に座れた。

…そして、何故か手は繋がれたまま。


「……」

「……」


ガタンガタンと、電車の音だけが響く。手を離そうと少し手を引けば、強く手を握られる。

…分かんないよ。遥が。
好きじゃないくせに、勘違いさせるようなことしないでよ…。

遥は反対側を見ていて、どんな顔をしているか分からない。呆れてる?怒ってる?


「…は、る」

「……なに」

「何か、怒って、る?」


と、ゆっくりとこちらを見る遥。その瞳は、やっぱり怒りを含んでいるようだった。


「迷惑かけて、ごめん…」

「迷惑?」

「さ、さっきので怒ってるんでしょ?」


おずおずと遥を見れば、きょとんとしていた。……え?


「別に怒ってない」

「お、怒ってるよ」

「…めぐには怒ってない」