あのままいけば、そんなヒーローみたいな台詞を言うはずだったのに。
なんで拉致されて俺達が助けに来たはずのスーちゃんに心配されてんだ!!
さっき拾ったナイフの刃先を
スーちゃんの手首に巻き付いているかたいロープにあてると、
ぐっと力を入れた。
が、切れない。
ナイフを持っている左手が、
利き手でないからか、
さっきの左ストレートで消耗したか。
でもすぐにもうひとつ手が重なって、ロープをぷつぷつと切った。
「クリュっち…」
気づくと三人ノックアウトし終えたクリュっちの右手が、
俺のナイフをもつ左手にかぶさり、
そのまま力が加わって、ロープが切れていた。


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