天音は腕にしがみ付く子に眉を顰め、面倒くさそうに溜息を吐いた。



「あのねぇ、夏葉ちゃん。何度も言ってるよーに迷惑なんすけど?」


「そうですか。スミマセン。でも諦めません♪」


「根性強いネ……。でも俺好きな子いるからムリって言ってるでしょーが。」


「分かってますよぉ。でもそれ先輩の片思いなんですよねっ?」


「……そーだけど。俺、心変わりする気はナイんだよ。」


「一途なんですね♪惚れ直します。」



絶句して天を仰ぐ天音に、夏葉と呼ばれた女の子が眩しいくらいの笑顔で言った。






「先輩がその人のコト好きな気持ちと同じくらい、私も先輩がスキです。どっちが先に相手を振り向かせられるか、闘いデスネ。私、負けませんから!」





その真っすぐな笑顔に胸がズキッと痛んだ。





目の前を行き過ぎる二人に声をかける事もなく

私は踵を返してその場から走り去った。