「やっほいお久しぶりね!」


「来るなら来るって言ってくださいよ~。」



メイドと、何人かの彼女を知る“常連”のお客様は彼女を見て歓喜する。


彼女、霰とは

つい半年前までこのメイドカフェでバイトしていた人気のメイドである。
人気メイドが辞めるとなった時はもうみんなが大粒の涙を流した。勿論、和紗だって同じだった。

実は和紗をメイドカフェ店員として雇った張本人でもある。



そんな彼女を半年ぶりに見て歓喜するのも無理もない。
人呼んで伝説のメイド。



「ちょっと姉さん…。帰っていいのか」


「あ、ごっめーんっ」


ドアは霰が食い止めているようでちょびっと開いており、ドアの前で誰か立っているようだ。

「その声…」


和紗はチラリと隙間から覗いた。
oh、あいつだ。



「なんで雪もいるの?」


「それはこっちが知りたい…姉さんに連れられてきた」

「うふふ~♪」


霰は悪戯っ子の笑みで、Vとピースした。



姉さん=霰。

そう。雪は霰の弟なのである。




「またバイトしねーかってこと?」

「イエース!」

「…」



雪は前にも姉の霰がメイドカフェ店員をしていると言うことで、黒子をしないかと誘われていたが断っていた。

従業員が足りなくて仕方なく和紗にピンチヒッターとして入ってもらったら、霰の“合う。”と言うことで継続中。


「あんたバイト続かないじゃないのー。せっかく姉様が紹介してやってるのに。まー薄情な奴ねー」

「うるさい」


雪はフッと目をそらした。


「なんかバイトしないの雪?」

「もーちょい言ってあげて和紗ちゃん」

「今んとこなんもいいとこないからな」


雪は大体バイトは2ヶ月続けばいいってとこだ。
続かない弟のために姉の霰は毎回誘っているのだった。




「取りあえずコレとコレよろしく~ね」

「はい、かしこまりました!」



霰がメニューを一発で開き、指で指示した。





和紗はぺこりと頭を下げて厨房に向かった。


「ケイト、注文入ったよ」

「イエッサー」


注文はケーキ。
キッチン補助のケイトにケーキを切り分けてもらい、盆にのせてホールに戻った。

さっきまでキッチン補助していたはずのケイトもホールに出てきてうろちょろとしている。


黒子(キッチン補助)でも執事服のようなきちっとしたものを着ているため、別にホールに出て来ても違和感はない。






ケイトはもう休憩か。




和紗は自分に活を入れた。