明日の英単語のテスト範囲である暗記カードを睨み電車移動する。
バイトばっかしてるので勉強なんかしない。はっきり言ってしたくない。
そして、帰った頃にはエネルギーが残っていない。
だからできるだけこの移動時間を有効につかって女子高生を楽しんでいる。
「和紗ちん?」
吊革に掴まってひたすら意識を単語帳に集中させていると、隣から名前が呼ばれた。
「おっ!まいやん!同じ電車だったんだ」
「だね~!いつも再テストだから合わないもんね!
あ…ごめん」
「本気で謝らないでプリーズ、私悲しい」
キャピキャピとする可愛い彼女は同じバイト仲間の“みゅう”だ。
心優しいが故?か、素直な故?かかなりストレート。
だが、それが彼女の“売り”。
「シフト何時間からだっけ和紗ちん?」
「ラストまでだよ」
「違う違う。“から”だよ」
“から”…?
ちょいと落ち着け自分。
みゅうがいるから気にしなかったけど、今時間がー…
「やばい。あとちょっとだ。殺される。先行くね!」
慌てて電車から降りて、定期をピタッと。
みゅうは置いていく。すまん、みゅう。
徒歩6分の場所をひたすら走る。
今日は私の雑用日だった。
だから殺されるとかいいながら彼女がいたから調子こいて時間がない。
「こんにちはー!」
「おかえりなさ…和紗!遅い!店長のシワが川の字になってるから鎮めなさいよ!あと、服は私がしてあるから」
「流石まいやん!サンクス!」
耳元でまいやんが言ってくる。
お客さんはそこそこ入ってるから客の目にあたらないようにだ。
他のバイト仲間達の“制服”にアイロン掛けをし用意をする。
そして装飾品などを指定の位置に置いて、待機場のゴミだし。
コレが俗にいう我が店の特別ルール。雑用日という日はその名の通り雑用させられる。
そのあと急いで“制服”に着替える。
更衣室に、私が放置してきたみゅうがせっせと着替えていた。
「みゅう悲しい」
「すまん」
真顔で言うみゅうが怖いがすぐに笑顔になり、ホールに向かう。
チャラリーン♪
扉に取り付けられたベルに反応。
「お帰りなさいませご主人様、お嬢様!」
これが私のバイトなのです。