長すぎる一日の授業を終え、荷物を抱えた時のこと。
部活や遊びに行くなどで徐々に人は減ってきた。

「和紗~今日暇でしょ」

「そう決めつけないでよー。私だって忙しいわいっ」

「さては男か!」

「バイトだって~安くするから遊びに来てね」




男がいるならはっきり言いたいが今のところ、17年間彼氏がいない。

にこやかにあいつが知って言っているのが少し突っかかるがまぁ今は急ぐしかない。

友人が手を降ってきたので私はピースをした。
今日は週4のバイトの日で遅れたら確実に殺される。
取りあえずそれは避けたい。
教室を出ようとした時、ふと思い出して窓際の一番光が当たっている席に座る彼のもとに急ぎ足。




「雪ー!今日ノート返しに行くから!」

「明日ノート提出の日だから忘れたら許さん」

「ほーい」

「うわ。信じられねー」

「死んでも返しに行きます」

「今日バ」



幼なじみである津守雪(つもり ゆき)にノートを借りた。
何気に賢い幼なじみで、かなりの策士。テストの問題当てなどがすごい。
彼に借りれば大体なんとかなる。だから毎回借りる時期になると横目で睨んでくる。
今日もそんな感じで、返さなければ残りの人生は終わったと同じ。
ペコッと頭を一拳あたり下げて猛ダッシュ。


どうせお隣さんだから夜バイト終わってから返せる。


「あいつ聞いて…ない」





“今日もバイト頑張れよ”



そう言おうとしたが、

嵐のように去られた我がアホな幼なじみの残像を眺めた。

“話を聞く仕事”なのにあんな感じでちゃんとやっているのか。
本当に不安だ。




…自分はやりたくないが。