LDK

朝食が並んだテーブルの椅子に彼女を降ろすと
向き合った席に彼が座り淹れたてのコーヒーを並んだカップに注いだ

「昨夜 ずいぶん遅くまで仕事をしていたね」

「そうなの 秋のね 展示会に出す作品を考えていて...つい夢中になっちゃって気づいたら…もう…明け方だった 満月(みつき)ごめんね また朝食 作らせちゃって…」

「結婚したら食事は俺に任せてよ」

「そうね…」

テーブルの上には 
目玉焼きにベーコンソテー 
コーヒーに彼女の大好きなクロワッサン
そして 彩どりきれいなサラダにフルーツ

彼女は両手で湯気立つコーヒーのカップを取り 口に運ぶ
彼女の瞳に飛び込んできた 左手の薬指に輝くもの 
瞳を大きく見開いてその手の薬指を見る

「満月(みつき)….これ..ダッ ダイヤ?」

彼は広げた新聞から顔を上げ 黒ぶちの眼鏡から彼女を見て
嬉しそうに

「やっと 気づいた? 百合(ゆり) はっきり言う 結婚しよう」

「まさか…あの棚の物を…見た?それで…もしかして? 満月(みつき) その事なんだけれどね…」

彼女は焦って早口にしゃべった

「えっなんのこと? それよりさっ 今日は 何の日か わかってるの?」

「あれに気づいていないのか....良かった…」


今度はホッとして彼に聞こえない様な声で言う


「ねぇ?今日は 何の日か 答えて」


堰かすように彼が彼女に顔を近づける


「あ……ん……今日は…」

「覚えてないんだ…」

もっと彼女に顔を近づける彼

「俺たち 一緒に住んで今日が1年 それでプロポーズしてんの」

「プロポーズ? 今?こんな髪でこんな寝ぼけた顔の私に 今?」

「そう」

また彼はアヒル口に満面の笑顔で答えた

「百合(ゆり)は どんな時だってきれいだよ」

「もう…あなたの言葉は魔法の様だわ いつだって私をうっとりさせる」

赤らめた顔を両手で押さえ恥ずかしそうに彼女が彼を見た

「百合(ゆり) この雰囲気は とてもありがたいんだけど…」

彼は 柱の時計を見た
彼女も柱の時計を見た

「あ~遅刻だ~」

「早く食べて」

「うん だけど 満月(みつき) 私の返事は…」

彼女は中腰に立ちテーブルを挟んで彼の頬を両手で押さえた
そして 顔を近づけていき 彼のふっくらしたセクシーな唇に 
甘ぁ~いKISSをした