彼が家を出て、しばらくたった頃急に空が暗くなり始めた。


このところ、毎日急に嵐のような夕立が降る。

きっと彼は傘を持って行かなかった。


私は、フラフラと立ちあがり玄関へと向かった。





傘立てから、少し大きめの彼の傘を一本掴むとムワっとする外へ出た。

むせ返るような暑さが、弱っている私の体に容赦なくダメージを与える。
引き返そうかと迷ったけれど、なんだか持って行った方がよいような気がして歩き始めた。


それは、予感だったのかも知れない。


なぜかソワソワする自分の心に戸惑いながらも、数分前に彼が通っただろう道を歩く。