「幸せな日々の後ろにはどうして影が潜んでいるんだろう?」
ポツリと呟いた透子の言葉に僕はドキリとした。
「それから……どうしたの?」
「あたしたちの関係に親が気付いたの」
「………親が…」
「まるで錯乱したかのような勢いで引き離されちゃった…お互いをどれだけ大切に想っているかを訴えても雑音扱いだった」
透子の声が微かに震える。
「気が動転した両親は狂ったように兄を保護するようになって、あたしは悪魔だと罵られてあたしを見る目はまるで汚物かのようで…」
僕は言葉を失った。
自分の耳を疑いさえした。
「やがて元々勤勉だった兄のアメリカ留学が決まったの。アメリカでイルカを研究しているチームに加わることが決定して」
……イルカ
僕はいつの日か透子の言葉を思いだしていた。



