樹海を泳ぐイルカ


「そうなんだ」

僕は遠い目で樹海をみつめながら答えた。

深い緑の樹木をみていると、全てのことが夢のように思える。

もう、今までのことが残像のように。



「詮索しないの?」

そう言った透子の顔のほうが僕を奥まで詮索するような瞳だ。



「しないよ」



僕は、少し疲れたから。