「彼方ー!いつまで寝てるの?起きなさーい」 一階から母さんの鋭い声がきこえた。 いつまでも、こうしているわけにはいかない。 いつかは夢から覚めなければいけなかった。 でもそれは簡単なんだ。 最初は難しかったけれど慣れって怖い。 振り切るように布団を蹴りとばし冷たい床に足を着けた。 制服に着替えて階段を駆け下り、歯を磨き顔を洗う。 鏡のなかの僕に僕は語りかける。 (いいか、ヘマはするな。お前はごく普通の幸せな1人息子だ。)