樹海を泳ぐイルカ


救いのチャイムがなっても僕の心は何も感じなくなっていた。

教師が入ってくると中谷やクラスのやつらはすぐさま自分の席についた。


僕はなす術もなくライオンに喰われた残骸のように横たわっていた。







「世良、遊んでないで早く席につきなさい。お前はチャイムが聞こえないのか?」







教師はずぶ濡れの僕と教室中に広がる焦げ臭い匂いを無視して言い放った。



キャスターの機械的な声が再生され、脳内に昨日のニュースが流れる。





僕のなかで、何かがプツンと切れた。





僕は、もうない力を振り絞って立ち上がり、ふらつく足取りで教室を飛びだした。