イルカショーの会場は満員で、みんながワクワクした顔で期待いっぱいに開演前のステージを見つめている。 僕と透子も、ステージを見つめる。 これが最後。 待ちきれなくてはしゃぐ子供。 ジッとしていなさいと注意する母親。 楽しみだね、と他愛もない会話をする恋人たち。 僕らはただ真っ直ぐステージを見つめる。 何も話さなかった。 繋いだ手も放さなかった。 はなせなかった。 「おまたせしました!本日の主役のイルカくんたちの登場です!拍手でお迎えください!」 歓声がわきあがる。 ………これが最後だ。