「あカメだ!カメ!」 その声で意識が引き戻される。 となりで、透子が通り過ぎる大きなカメに手を振っていた。 つられて僕もやわらかく笑った。 「ほら透子、あっちにくらげがいる」 「ふふっ、ほんとだ!」 小さなライトで照らされた水槽に、三匹ほどのほんのりと虹色に光るクラゲがふわふわ漂っている。 「ね、奥の方に行ってみようよ!」 そう言ってハシャぐ透子は普段よりもずっと幼く見えて、いきいきとしていた。 「いいよ」 僕らにとって、これが初めて樹海以外の場所で会う機会だった。