樹海を泳ぐイルカ



「聞こえる…」

ぽつりと降ってきた透子の言葉。

「……なにが?」


辛うじてかすれた声がでた。
口を動かすと血の味が広がった。



「彼方の…イルカの声」



見上げた透子の霞んだ顔は、優しくて暖かくて…


きつく抱きしめられた温度が全身に広がり、心に到達したとき僕は透子の優しさに麻痺をする。



麻酔。




「…寂しかったね」




あぁ、そうか。





僕は寂しかったのか。