熱帯夜


うちの職場は厳しい事で有名だった。

“入れ替わりの激しいお店”

そんなレッテルを貼られている様な、上下関係からノルマまで、本当に厳しかった。

しかし、長く続く人は続くものだ。
いつも相談してくる後輩君もその内の一人だった。


『先輩っ先輩っ』といつも呼んで来るけど、彼とは同い年だった。
厳しいと言うのもあり、後から入ってきた年上の人にも『先輩』と呼んでいた。

内心、彼はすぐに辞める部類に入る人だと思っていた。

だけど、違った。

仕事の覚えも早く、自分からどんどん仕事を見つけ、接客も社員より多くこなしていた。


「俺、早く慣れて、販売の仕事がしたいんす!」

研修期間中、彼はよくそう言っていた。

「じゃあ、早く研修期間が終わる様に、ラッピング上手くならなくちゃね。はいっ、これ全部袋ラッピングね」


少しスパルタだったと思う。

けれど、彼はそんな事を気にする事なく、何でもやってくれた。

きっと今まで教育してきた新人スタッフの中では一番の優等生だ。