政略結婚はじめました

目の前の成瀬は呆然としている



「華…何でここに…?」



「えっと…新郎の方が主人の友人で」


明らかに動揺している私を見て成瀬は笑った


「そう言えば結婚したんだよね
何か華、結婚して前より綺麗になったね」


思わず顔を上げると目の前の成瀬と目が合った


変わらない優しい笑顔


「そのドレスもよく似合ってる」


「このドレス着たの2回目です
お店最後の日と今日と…」


「ありがとう華、ところで旦那様は?」


成瀬は辺りを見渡す


「今、仕事関係の人に挨拶しているみたいで…
成瀬さんにもご紹介しますね」


私も成瀬につられ辺りを見渡した



すると遠くから無表情でこちらを見ている賢治と目が合った気がした



「賢治さん…」



私が小さく呟くと成瀬は


「えっ…」

と驚いたように私の目線の先を見た



成瀬が驚きながらも問いかけた瞬間、賢治が人混みを掻き分け私達の元へ駆け寄った



「成瀬…」


少し震えた声で賢治が呟いた


「賢治さん…」



私の問いかけに賢治は、ハッとした


「ごめん…紹介するよ妻の華だ

華、こちら大学時代の同級生…
成瀬浩一さん」



賢治は私を力強く自分の元へ引き寄せた


腰を抱く賢治の手は少し震えているような気がした


賢治さん…?



見上げた賢治の不安気な瞳は笑っていない


成瀬は何かを察したかのようにフッと笑った



「初めまして、華さん」