「わたし…」



「多分、風邪だと思うから今日はゆっくり寝てろ」


そう言いながら賢治は額のタオルを変えてくれた


ヒンヤリしたタオルの上から大きな手が私の頭を包み込む



「はい…」



私は部屋を出て行こうとする賢治の右手を思わず掴んでしまっていた


「ごめんなさい…

もう少し一緒にいてください…」



体が弱っているせいか一人になる寂しさが襲った


驚きの表情で振り返り優しく私の頭を撫で賢治は寝室を出た



しばらくすると賢治はノートパソコンを寝室に持ち込み寝ている私の隣に座った



賢治さんが仕事をする姿、初めて見たなぁ…



「そんなに見つめられると、やりにくいんですけど…」


賢治はパソコンの画面を見ながら呟く



「ご、ごめんなさい…」



私は恥ずかしくなり慌てて目を閉じた



いつの間にか大きな彼の左手を握りカチカチというパソコンのキーボードを弾く音を聞きながら深い眠りに落ちた




初めて手をつないだ夜でした