再び寝室の扉が開き目をやると会社で見る社長姿の賢治が立っていた


賢治はダイニングテーブルに置いてあった新聞を広げ椅子に座る


「時間無いから早くご飯ちょうだい」



「あっ、はい」



新聞で賢治の表情までは見えなかったけど少しホッとした



それでも2人の食事に会話は無く目の前の賢治は黙々と私の作った料理を食べている




「あの…、お口に合いますか?」


沈黙に居た堪れなくなり恐る恐る、表情の見えない賢治に問いかけた


「ああ…」



私は目の前の賢治が気になり、せっかく作った料理の味もよく分からず黙々と口にご飯を詰めこむ



「あ、そうだ」



賢治の一言に俯き食事していた顔をあげると


「はい、コレ」


新聞をたたみカバンから小さな箱を出してきた



戸惑いながらも、その箱を開けてみると有名ジュエリーショップの指輪が入っていた



「あの…これ…」


「一応、結婚指輪」


そう言い席を立つ賢治の左手薬指に指輪は、はめられていない


「…」




「今日は接待だから遅くなる」




見送りをする暇もなく玄関の扉が閉まる音だけがダイニングに響いた



一応って…


自分はしてないくせに…





残さず綺麗に食べた賢治の食器を見ながら両肘をテーブルについた


こんなんで結婚生活上手くいくのかなぁ






キッチンには二人分のお弁当が寂しく並らんでいた