「加集さーん」


玲は手を振りながら、笑顔で加集の元へ小走りした。

加集は彼らしく、カーキ色のダウンジャケットにジーンズというシンプルでカジュアルなスタイルだった。


…なぜ加集とは、こんなに気安くできるのだろう。
知り合ったばかりなのに。
まるで子犬になったような気分で彼に戯れたくなる。

不思議だった。


「玲ちゃん、おはよう」

加集は1人だった。

「あいつら、来れなくなったんだ。
二人して、インフルエンザに罹りやがった」

文句を言っているようで、加集の口元はちょっと笑っているように見えた。

「えっ…」

戸惑う玲に加集は言った。

「車も借りたことだし、
二人で行こう」

さっと助手席のドアを開け、玲に
乗って、と手で促した。




車を走らせると同時に、加集はカーカジオを付けた。
朝っぱらから中年らしい男がハイテンションで喋っている。


加集はラジオのボリュームを少し下げ、問いかけてきた。

「俺っていくつに見える?」
「えっ?」

いきなりの質問に玲は戸惑う。

男の人の年齢がよくわからない。
10歳上の兄の健一よりは若いに違いなかった。

玲は言い淀んだ。