「社長、コーヒーです」


「ありがと」


デスクの上にある布製のソーサーの上に、秘書のライアンが私のお気に入りの黒猫の絵が描いてあるコーヒーカップを置いてくれる。


パソコンから目を離しカップを持つと、ふわっとコーヒーのいい匂いが漂った。


「んっ」


「どうかしましたか?」


「苦い」


飲んだ瞬間、コーヒー特有の苦味が口いっぱいに広がる。


「これ、砂糖もミルクも入れ忘れたでしょ?」


思わず私は、私のデスクのすぐ傍に控えていたライアンを睨んでしまった。


「申し訳ありません。入れ忘れました」


「甘いのがいい」


そう言ってライアンに向かってカップを突き出す。


そのカップを受け取ったライアンが、社長室についている給茶室の方向に体を向ける。


新しいのを入れてくれると思った私は、パソコンに向かってクルッと椅子を回転させた。