そんな中、直登が話を進める。
「別に、そのことでどうこうって訳じゃねぇんだけど、もしその件で練習に支障が出てるなら、とにかく今は忘れてほしい。」
「・・・・・・」
「今だけでいいんだ!練習してるときだけで!」
俺の肩を掴んで必死になって俺に訴えてくる直登。
でも俺は、何も言うことができなかった。
そんな俺をしりめに、直登が俺の肩から手を放してまた口を出す。
そして、それは俺の心にそっと優しく入ってきた言葉だった。
「・・・恋って難しいんだよ。でも、だからってそこにばっかり首突っ込んでる場合じゃねぇんだ。そこは、分かれよ。」
ここには俺と直登しかいないのに、直登は呟くようにその言葉を口にした。
直登の表情を見ると、その顔はすごく優しい顔だった。
俺はてっきり怒ってるんだと思っていた。
でも、そこにいたのは俺の想像していた直登とは全く違う直登だった。
「なんで、直登・・・」
「今の雅、ちょっと前の俺に似てるからな。」
腕を組んで、得意げに頷きながら俺に言う直登。
俺が、直登に似てる?
「その人のこと考えてると何にもできなくなる。でも、それじゃだめなんだよな。」
直登がクシャッと笑った。
何でこんな時に、こんな風に笑えるんだ。
直登は、俺を説教するためにここに連れてきたんじゃねぇのかよ。
「雅、今すぐには無理かもしんねぇけど、気持ちの切り替えするの頑張ってくれよ。」
クシャッと笑っていた直登の顔が少しだけ真顔になる。
それは、俺のことを考えながらちゃんとバンドのメンバーのことも考えてくれている証。


