「・・・じゃぁお借りします。」
俺はその人の手から再度タオルを受け取る。
正直な話、急いで出てきたせいもあってタオル忘れてたんだよな。
このまま学校行ってどうしようか悩んでたのが事実。
すぐ汗拭かねぇと、一日中汗臭いどころじゃねぇもんな。
俺としたことが・・・。
キーッ、シュー。
バスの変な停車音と共に、乗っていた人数名が降車し始めた。
「私もここだから、じゃぁね。」
「あ、はい。」
そう言って隣にいたその女の人もバスを降りて行った。
と、俺の手元を見て「あ!?」と言ったのは当然のこと。
ハンドタオル返すのを忘れていた俺。
なんで、気づかなかった!?俺。
バスはすでに動き始めていて、さすがにここで止めてくれとは言えず。
いくらあの優しいじいさんでも2度目はねぇだろうし。
仕方なく俺はそのタオルを自分のカバンに入れた。
このタオルを他のやつに見られてみろよ。
どこの女だ、って話になってみろ。
俺のメンツ丸つぶれだっての。
でも、これってまるであの女の人が悪いみたいな言い方になってねぇか?
それは申し訳ねぇな。
と、変なことを思いつつ俺は自分が降りるバス停まで外を眺めていた。


