カタンッ―――。
氷がまたコップの中で小さく動いた。
俺の周りの音は何も聞こえなくなって、ただ俺の心臓の音だけがやけに大きく聞こえた。
「え、っと・・・」
「・・・ごめんなさい。」
俺が戸惑っていると、紗奈が俺に謝った。
でも、紗奈は今謝る必要なんてないはずなのに。
「私、最近あのお姉さんに妬いてた。一人で勝手に、バカだよね・・・」
そう言う紗奈の顔は寂しそうで、でもどこかスッキリした雰囲気だった。
「最近、雅があのお姉さんの話をしたり、お姉さんを見てた時の表情が、私みたいだって思えたの。」
「・・・・・・」
「恋をすると、好きな人のことに夢中になっちゃうから。何をしててもその人のことを考えたり、気づいたら目で追っちゃうの。」
紗奈が淡々と静かに話していく。
それは、全部今までの俺のようだった。
今まで俺は、恋という恋をしてこなかった。
だから、好きとかそんな感情を知らなかった。
でも、紗奈の話を聞いていると、ピッタリ合うことがたくさんあった。
「雅は、きっと、絶対、あのお姉さんが好きなんだよ。」
紗奈が俺の目を見てそう言った。
うっすらと目に涙を溜めて。


