「君以外に誰がいるのよ。ギター重いでしょ?」
「あぁ、重いです。・・・いいすか?」
「どうぞ。」
俺に話しかけてきてくれたのは、女の人。
社会人、ぽいけどどこかまだ学生の面影があるような気もした。
その人は自分の隣に置いてあった荷物をわざわざ足元に置いて、隣の席を開けてくれた。
こんな俺のために!?
俺はギターを背中から降ろしてその人の隣に座らせてもらった。
どこか甘いにおいがするのはこの人のつけている香水の匂いなんだろうか。
俺、香水苦手なんだけど、このくらいの匂いなら大丈夫だ。
って、俺変態ぽくないですか?
「汗すごいね。走ったの?」
「あぁ、そうなんですよ。遅刻すると思って走ったんすよね。こいつが重いせいでかなり体力消費・・・。」
「そっか。大変だったね。よかったらこれで汗拭いて?」
その人は俺にハンドタオルを渡してくれた。
薄い桜色で、この人にピッタリだと思えるものだった。
「でも汗臭くなるし、大丈夫です。こんな綺麗なやつ汚せねぇし。」
「いいの。私、汗が汚いなんて思ってないから。色々と頑張ってる証を汚いなんて言えないでしょ?」
「でも、俺の場合は男だし。女と男の汗は違うって。」
「そんなことないよ。はいっ」
俺が受け取ったタオルを返そうとしてるのに、それでもタオルを渡そうとしてくれる。
このまま断るのも、逆に悪い気がしてくる。


