そう思いながらも、心臓をドキドキさせながら紗奈の返事を待っている俺は、情けない。
『・・・私ね』
「おう。」
『好きなの・・・』
俺の耳に届いたその言葉は、すぐに理解することができなかった。
これは、俺がした質問にふさわしい答えなのか?
そんなことしか思えない俺は、なんて言っていいのかわからなかった。
『・・・雅?』
紗奈の俺を呼ぶ声が聞こえても、それにすら返事ができなかった。
返事をすればいいのに、できずにいた。
バカな俺は、この状況をどうすればいいのか、全く分からずにいた。
その時、電話の向こうで紗奈が小さく「はぁ・・・」と言ったのがわかった。
「あ、えっと・・・紗」
『私ね』
何か言わねぇと、と思った俺のことをよそに、紗奈が話し始めた。
『言っとくけど、雅の作った曲と歌詞が好きなの。誤解しないでよねっ?』
「え?・・・はい??」
『だから、変な期待しないでってこと!とにかく、早く作って明日に間に合わせてよね!』
「お、おう。歌詞はさっきできたけど。」
『え!ほんとに!?聞きたい!読んでみてよ。』
さっきまでの紗奈のあの暗い雰囲気はなく、電話の向こうでいつもの笑顔で話している紗奈の情景が俺の頭に浮かんでいた。


