紗奈のことも部活のこともいっぺんに考えるからきついと気付いた俺の脳内は、いつの間にか一点のことしか考えてなかった。
紗奈のことよりも先に部活の方を取った俺。
紗奈のことも、気にはなる。
でも、まずはやるべきことから、という俺の気持ちが上回った。
「これで歌詞は完成した。あとは曲だな。」
一人部屋でギターを抱えて弦をはじく。
その時、ふと思い出した。
「あ、弦。」
チューニング。
朝の紗奈。
「紗奈が、俺のギターの弦を?」
いや、そんなことはない。
紗奈がそんなことする理由がねぇもん。
学校まで運んでるときに緩んで・・・。
今までそんなことはほとんど、いや、全然なかった。
俺はギターを一回腕から離し、ケータイを握る。
そして、電話をかけた。
『もしもし』
「紗奈か。」
『どうしたの?もしかして、歌詞浮かばないとか?』
「紗奈、今朝俺のギターの弦いじったか?」
そんなわけねぇよな。
弦緩めたところで何にもならねぇって、紗奈だってわかってるだろ。
なにやってんだ、俺。


