「あいつどこ行ったんだ。教室に戻ったのかと思ったんだけどな。」
『席つけー』
そこに担任が入ってきた。
それでもなお、紗奈は教室に戻ってくることはなかった。
一時間目、二時間目、三時間目と時間が流れていく。
紗奈が戻ってこないまま、気づけば昼休みを迎えていた。
俺は弁当を持って紗奈の姿を探す。
俺はいつも紗奈と昼休みを過ごす。
何で紗奈と一緒なのかって聞かれると不思議だけど、別に一緒にいて何が悪いって話だろ?
「雅ぁ、俺らと一緒に食わねぇ?」
「あぁ、悪ぃ」
俺はいつもあいつらの誘いを断る。
最初の頃こそ俺と紗奈は付き合ってるとか言われてたけど、最近はそんなことは全くない。
周りも俺らが一緒にいることを見慣れてきたんだろう。
相変わらず、俺に飯の誘いをしてくるやつはいるけど。
「おう!雅っ」
「あ、鈴木先輩、どぉも。」
紗奈を探している途中に声をかけてきたのは軽音楽部の先輩。
鈴木先輩は、俺と同じギターとヴォーカル担当。
今更ながらの紹介だけど。
「今日は平野と一緒じゃねぇのか?」
「今捜してんですけど、いなくて。見ませんでした?」
「俺は見てねぇな。やっぱお前らって付き合ってんの?」


