「そういうことじゃなくて・・・」
「どういうことだよ。」
「もういい!」
そのまま視聴覚教室から出て行ってしまった紗奈。
なんで俺怒られてんの?
俺の目の前には俺の相棒がポツンと、寂しげに立っていた。
そのギターにそっと触れる。
「てか、紗奈俺の相棒に勝手に触ってんなっての。」
俺の一番大切なものはこのギター。
親父に初めてまともな誕生日プレゼントとして買ってもらったもの。
それまでどんなものを貰ってたのかなんて、言えねぇくらいヤバいものばっかだった。
今までこのギターを触ってたのは俺だけ。
けど、今日、初めて他人に触れさせた。
あの時、紗奈じゃなかったら多分殴ってたな。
それくらい、俺はこいつが好きなんだ。
「・・・好き、か」
ギターをしまい、視聴覚教室を出た。
教室に戻ると、そこはもうクラスメイトで埋め尽くされていた。
あと数分もすれば担任が来る時間だ。
自分の席について、紗奈の席の方を向く。
けど、そこに紗奈の姿はなかった。


