これから三十分間、まだこのドキドキを胸に過ごさなければならない。
「雅、大丈夫か?」
「あぁ。疲れはヤバいけどな。」
「今日の合わせ、今までで一番よかったよね!」
紗奈が笑顔で言うと、陵と直登も「同じこと思った!」とピッタリ声をハモらせながら言った。
「今日、私最初緊張しすぎてて弦強めに弾いちゃったんだよね・・・。」
「あ、でも俺も緊張して楽譜を目で追ってたら、音がわからなくなっててさ。」
「ドラム側から言わせてもらうと、最初はまじで音拾えなくてこっちも困った。緊張で余計にな。」
「でも、そこはやっぱりリーダー様よね。」
「んえ?」
俺、ですか?
「雅がサポートしてくれたのわかったから。そしたら、緊張が徐々にほぐれてきたの。」
俺が、紗奈の緊張を?
「俺も俺も!雅のギターの音が急に聞こえやすくなって、最初どうなるか怖かったのに救われた!」
俺が、陵の不安を?
「で、ドラム側から言わせていただきますと、きっと雅のおかげで立ち直ったんだろうって気づいて、こっちとしても安心したわけです。」
俺が、直登を安心させた?
「今回は雅のおかげがいっぱいだったね!」
「だな!これからも窮地に立ったときはよろしくな、リーダー!」
「ドラム側から言わせてもらうと、雅に頼ってばっかだったらだめだぞ、お前ら。」
紗奈と陵に注意する直登。
「直登、その話方どうしたの。何様?」
「うっせ、紗奈に言われたくねぇよ。」
「まぁまぁ、二人とも。」
「「陵こそ何様!?」」
俺の目の前にいる三人は、すごく輝いた笑顔で笑っていた。
「お前ら・・・」
「ん?・・・って、え!?どうした!?」
いつのまにか俺の視界が歪んでいた。


