三組目が終わって、俺らの番が回ってきた。
「んじゃ、次。えっと、雅ヴォーカルのところな。」
「「はいっ!」」
前に出てそれぞれアンプにシールドをさしたり、ドラムのチェック、コードのチェックやマイクのチェックをした。
「お願いします!」
準備ができたのを確認して、四人で礼をした。
そして、俺たちの楽器が音を奏で始めた。
俺だけじゃなく、みんな緊張してる。
それが楽器の音を通して伝わってくる。
紗奈、強く弾きすぎ。
だったら、俺もこうするしかねぇだろ。
陵、俺の音聞けよ、紗奈のおかげで強めに弾いてんだから。
直登、分かってきたか。
やっべ、全体的に音がバラつきすぎ。
声で何とかアピールできるか。
分かってんじゃん、みんなバランスとれてきた。
最初、紗奈のベースが少し目立ち過ぎていた部分を俺がカバーして、それに合わせて陵が上がってくる。
ドラムの直登が俺らの変化に気付いて、ドラムの方でもバランスを調節してくれて。
みんなで話し合ってねぇのに、話してるみてぇだ。
出だしだけどうなるかと思った俺らの音は、最後には一つの最高の曲を作り上げた。
「よし、これで十組全部終わったから・・・七時だな。今から三十分間で決めようと思う。それまで好きに過ごしておいてくれ。」
バンド十組目が終わった時間は六時三十分くらいだった。
どのバンドもやりきった感満載だった。


