トラックの垂れ流す黒煙と爆音で目を覚ましたカナは、昨日の宴の跡を見ると
「やっちゃった…」
と、一言吐き捨てて、片付けを始めた。部屋をざっと見ると、ビールの缶が7、ワインのビンが2、スナック菓子の袋が4、ピザの空き箱が1、その箱の下に女が1。ハルカだ。駅のガード下で眠るように、段ボールをピザの空き箱に変えて眠っている。目が少し開いているのが恐い。
「ハルカ。起きて、ハルカ。」
あまりに自分の声がヒドイので驚いたが、その声はハルカに届いたようだった。ピザの空き箱を払い、起きると
「あ、あれ?カナどうしたの?」
どうしたの?ではない。アンタがどうかなっている。カナも記憶が所々消えていたが、目の前の今年で三十路になる女は、昨日の夜の記憶を一つも残していないのだろうから。
時計を見るかわりに、テレビを点けると、バラエティ班のアイドルがサイコロを振っていた。
「ふぅ」
と、ため息を一つつくとカナは片付けを始めた。ハルカはまだ動けそうにない。しかし、ハルカも記憶がないなりに、申し訳ない顔になっていた。やってしまった予感。また、乱れた予感。正解。