「あの…お断わりしたんですけど…どうしてもお会いしたいと…お客様が…」
受け付けの女の子の声が小さい。きっとその客が目の前にいるのであろう。困ったファンか?
「お名前は?」
「田口様とおっしゃられました。」
ハルカ!?どうしたのだろうか?
「少しソコで待ってもらってください。」
カナはそう言うと、ケータイを閉じて立ち上がった。そして、アナウンサー室を出て、エレベーターの前で『8』が光るのを待った。
「アレ?もしかして田口君?」
カナはもう一つの可能性を思いつき、思わず声にしてしまった。
「いや、ないなぁ…でも…」
いくら考えても答えがでない問題だった。その時、エレベーターのドアが開いた。

もう一度ドアが開いた。ソコは一階のロビー。カナはキョロキョロと見た顔を探した。
「あっ!コチラです。」
受け付けの女の子がカナを見つけた。そして、カナは視線を左右にしながら受け付けに向かった。
「アラ?田口さんは?」 「コチラです。」
受け付けの子が手の平で指したのはハルカでもユタカでもなかった。まだ美しいと言うより可愛い女性だった。ハルカと同じような体型ではあったが、服装のセンスが違った。